村上春樹の小説「女のいない男たち」から一部の設定、名前などを使用、アントン・チェーホフの戯曲「ワーニャ叔父さん」の台詞を交ぜた別の物語として構成されているようです。
2021年制作・日本・179分
監督濱口竜介
脚本 濱口竜介、大江崇允
原作 村上春樹
ネタバレ度30%(後半ネタバレ度80%)
あらすじ
舞台俳優であり、演出家の家福悠介(西島秀俊)と妻・音(霧島れいか)は平凡な日々を送っていた。
ある日、出張が中止となり、帰宅する家福は音の浮気を目撃。
数日後、音から話がある・・と言われる家福はわざと遅く帰ると音が亡くなっていた。
こんな感じで物語が始まります。
主役の家福が演出家なので、芝居の稽古シーンもあり、それがややこしく感じます。
何度も視聴しないと、本当の物語の内容を把握するのは困難な感じ。
考察を読み、私なりに理解した部分のみを書き出します。(間違いもあると思います)
もっと知りたい方
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80%のネタバレ
家福と音は昔、子供を失っていました。それから2人の関係は妙な感じになった気がします。
セックスの最中、音は物語を話し始め、終わると忘れてしまうので翌日、家福が話して思い出したものを執筆する音・・。
これで音は脚本家として成功。
これが2人の日常、という少し風変わりな夫婦だと思いました。
家福も舞台の台詞を覚える時、相手役の台詞部分を音がテープに録音、それにあわせて台本を覚えていました。
家福は車を大切にしていて赤い「サーブ900ターボ」を運転する時、このテープを繰り返して流し、台詞を覚えていました。
娘を肺炎で失ってから、2人はこうして心の傷を癒していたのでしょう。
音がくも膜下出血で急死したため、彼女の話を聞くことが出来なくなった家福。
浮気の件を言われたら・・とか、彼女を失いたくない、面倒なことから逃げたい思いでその日、早くに帰らなかったのかな、と。
結果、2度と音と話すことが出来ないまま心に大きな傷が残ってしまいます。
浮気を知った時、知らぬ顔をせず、夫として堂々と話し合うべきだったのでしょう。
自分からも、嫌なことからも、音からも逃げた家福だと思います。
これが新たな心の傷を作っていると思いました。
2年後
「ワーニャ叔父さん」で名声を得た家福は舞台演出家として広島へ。
家福が長期滞在し、「ワーニャ叔父さん」を上演することに。
各国からオーデションで選ばれた俳優も集まり、自国語で演じる舞台。
家福は宿舎と仕事場を行き来するため、移動にドライバーを雇うことに。
女性の運転は好きでない家福だったが・・みさき(三浦透子)の運転を見て納得。
みさきの運転中、「ワーニャ叔父さん」のテープを流しながら仕事場と宿舎を往復する生活に。
オーデションには日本、台湾、韓国などから俳優が集まります。
重要なソーニャ役には、韓国人のイ・ユナを採用。耳は聞こえるけれど、台詞は手話を使用する俳優。
ワーニャ役には日本人・高槻を採用。音の作品にも出演していたが・・彼は妻の浮気相手では?と考えていた家福。
トラブルを起こし、仕事がない状態の高槻だったが俳優としても気に入っていた家福。
舞台の練習も始まるが、それは棒読みで読み上げる台本だった。
(そういう舞台らしい)
みさきの運転で移動するうち、話をするようになる2人。
高槻と話す家福は、もしかしたら妻の不倫相手では?と、思いながらも冷静を装っていたが・・。
高槻から、セックス中には物語を話していた音・・と知る家福。
舞台の準備は進み、最終稽古の頃・・警察に逮捕される高槻。
殴った男が死亡、ワーニャ役は台詞の入っている家福が演じることに。
高槻が警察に捕まり、動揺した家福はみさきにどこかへ連れて行って欲しい・・と頼む。
みさきは家福を乗せ、自分が育った場所へ。
家福は音が亡くなる前、話し合いたい・・と言われたが避けたことをみさきに告白。
浮気の件を言われたら・・と、不安になったと説明。あの時、早くに帰れば彼女を助けることが出来たかもしれない、と。
それを聞いてみさきも告白する。
みさきは小さな村で育ち、大雨の地滑りで自宅が崩壊、母を失っていた事を打ち明ける。
当時、水商売をしていた母は娘のみさきに運転させるため教えたものだった。
母が起きないよう、丁寧に運転することを覚えたみさきはその後、家福にも運転が上手い、と言われるように。
みさきは自宅が大雨で地滑りが起きた時、自分だけ逃げたが・・母を助ける事が出来なかったのを責めていた。
「もしかしたら・・私が行動すれば母は助かったのかも。母を見殺しにした・・」
それをずっと、引きずり後悔しているみさき。
みさきの母は彼女を酷く殴った時、別人格が現れていた。幼い子供が現れ、その子とは友達だった・・というみさき。
母の死により、母と親友を失った、と告白。
みさきの思いを知り、
「もう1度だけ話がしたい。音に会いたい・・取り返しのつかないことをしてしまった・・どうしようもない・・」と、叫ぶ家福。
「生き残った者は・・死んだ者のことを考え続ける。どんな形であろうと・・それがずっと続く。僕や君はそうやって生きていかなきゃいけない・・」
涙を流し、みさきを抱きしめる家福。
舞台は大成功に終わる・・
韓国で家福の車を運転、買い物をするみさき。
―完―
ラストの舞台シーンで、ワーニャを演じる家福が、
「なんて辛いんんだろう・・この僕の辛さがお前にわかれば・・」と言います。
それを妻が手話で慰めるシーン、すごく良かったですね。ここが実際の家福とリンクしてると思いました。
ただ、手話や外国語のシーンも吹き替えが欲しかったです。
この映画、インターナショナル版と普通のがあるようです。
劇場版はPG-12指定なのですが、プライムビデオのインターナショナル版はR-15指定だそうです。
愛する存在を失った家福とみさき。
喪失と再生を描いてる作品なのかな、と思いました。
1度視聴じゃ理解出来ないですね。考察、深いネタバレなどを見て、更に視聴するともっとわかると思います。
ラスト、みさきは韓国にいましたがあれは・・家福が韓国公演だったのか・・。それとも、みさきの母は韓国人で母を理解して許したから戻ったのか。
あの犬はユナさんの犬だったような・・?その辺はよくわかりません。
深い映画だったなあ、という感想。
とにかく!「ワーニャ叔父さん」を先に理解しておかないと、この作品を本当の意味で理解するのは困難だと感じます。
台詞と家福の状況がリンクしてるからです。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。
好き度は★3個(満点5個)